環境教育ネクストステップ研究会

地域ESD活動推進拠点

SDGsと企業の環境経営【第1回 開催報告】


四日市市・四日市商工会議所 共催事業
SDGsと企業の環境経営 第1回開催報告

日 時:平成30年10月30日(火)15時~17時
場 所:四日市市役所職員研修室
参加者:54名
テーマ:SDGsと企業の環境経営
講 師:SDGパートナーズ代表取締役CEO 田瀬 和夫 氏
主催者挨拶
環境部長 田中 賢二
SDGsは持続な開発目標として2015年に国連で採択された共通の目標。一般の関心は高くないが、企業ではすでに広がっている。
昨今の環境課題、地球温暖化や海洋汚染、生物多様性など、対策を打たないと取り返しがつかないことになる。企業がそこに危機感を持った結果が、環境投資ESG投資に現れている。かつて公害を経験し、環境改善に取り組んだ四日市市で、SDGsをテーマとした講座をできることは喜ばしい。これをきっかけに四日市市からSDGsを広げる機運を高めていけることを祈る。

講演概要
(1)SDGsと企業活動
 SDGsは、国連で世界のすべての加盟国が同意したものであり、国連憲章に次世代も考慮した時間軸を加えたもので、現時点で人類が到達した一つの生存戦略と言える。2030年のありたい世界の姿を示している。しかし、これは政治的宣言であり、法的な拘束力も持たないものである。
 それにも拘わらす、なぜ、多くの企業が意識するのか。それは、SDGsを推進する中に
 ・多くのビジネスチャンスが創出される
 ・コンプライアンスの圧力が上がる
 ・これを進めないとビジネスの土台である政情不安、環境資源の喪失等を招く
からである。
 では、SDGsに取り組むとはどうすることなのか。現在の取り組みは、多くが自社の活動とSDGsの17の目標の紐づけに終わっている。SDGsを経営戦略に落とし込んでいくことが必要である。その時の、基本的な考えは、逆算思考(時間的逆算と論理的逆算)リンケージ(連関)である。ここまで行きたいという目標(2030年に達成していたい目標)からバックキャスティングして、今必要なイノベーションを起こしていくことが時間的逆算であり、課題に対して対処療法的に対応するのではなく、論理的に解決策を実施することで、根本原因の解決につなげるイノベーションを起こしていくのが論理的逆算である。また、それぞれの目標は、互いに関連しており、(各組織にとって)梃子(てこ)となる目標(レバレッジ・ポイント)が一つか二つある。それに対する施策を実施する中から、一気に様々な状況が改善されていくという、いわばドミノ現象が起こりうる。例えば、国連の世界食糧計画(WFP)は、学校給食を推進する目標2の飢餓をゼロにするというところからスタートして、複数のSDGs目標を連鎖的に達成するというつながりを考えている。この講座の第2回で発表していただく、コマニー株式会社は、目標9の産業と技術革新の基盤を作るところをキーに、さまざまな目標に関連していくメビウスモデルとして、経営戦略に取り込まれている。
企業にとって、SDGsに関係して、もう一つの大きな流れは、ESG投資である。ESG投資は、環境への配慮やサプライチェーンの透明性、不正をしない健全性など、企業にとって内臓の健康診断のようなものである。これを見ることによって、10年後この企業がどうなっているかを判断して投資しようとするものである。これは、企業にとっての必要条件であり、これだけで利益が上がるものではない。しかし、SDGsに紐づいたESG投資について知らないでいると、突然投資の引き揚げ(ダイベストメント)がなされることがありうる。いま企業が見られているのは、気候変動への対応や人権(サプライチェーンでの児童労働がないかなど)が見られている。例えば、石炭火力への投資している企業に対して、ヨーロッパのいくつかの投資家は引き揚げると言っている。このようなことを意識しておかないと日本の企業価値は大きく落ちる。
環境に関していうと、気候変動のリスクと機会が各企業の財務に及ぼす影響の開示(TCFDなど)とか、海洋プラスチックに関する対応が企業を評価するものとして入ってくることなどを考えておく必要がある。SDGsの各目標を環境の視点で考えていくと、環境がベースになってその上に経済活動があるというリンケージ(ストックホルム・レジリエンスセンターのSDGsウエディングケーキモデルなど)が考えられる。

(2)SDGsと地方自治
 政府による地方創生は、①地方に仕事を、②地方に人の流れを、③結婚・子育てができる、④まちづくり、から成り立っているといえる。このうち①以外は、成功していない。
地方創生には、いくつもの成功モデルがあるが、いずれも単一事象への取り組みに終わっており、波及効果が出ていない。これには、地方行政の縦割りがあり、それぞれがバラバラに行われていることによる。例えば、環境への取り組み、社会に対する取り組み、ガバナンスに対する取り組みに投資されているが、それらをつなぐ部分への投資はなされていない。それをつなごうとするのがSDGsを意識した取り組みである。内閣府もそれを目指そうとし始めている。内閣府がSDGsに取り組むのに一番大切なのは、リンケージ(連関)であると言っていることは、地方自治においてSDGsを考える最も大切なことである。
SDGsを地方創生に取り入れようとする動きは、全国に広がりつつある(SDGs未来都市など)。四日市市、三重県でも、是非、取り組んでほしい。

(3)中小企業とSDGs
講演中の田瀬和夫さん  中小企業がSDGsに取り組む理由を企業側から見ると
① SDGsに取り組もうと思うと、経営理念と社会的意義を考え直すことになり、ぶれ  ない経営の軸足ができる。
② 世界のビジネスの潮流に乗ることができる。
③ SDGsを活用し、情報発信を行うことによって、ブランディングすることができる。それによって、いい人材の確保にもつながる。

また、外側から見ると、
① 中小企業にしかできないイノベーションがある。(大企業では迅速な意思決定が難しい)
② 中小企業ほど、地場の経済に貢献できる企業はない。地域の発展に貢献できる。
③ 経営者と社員の距離が近く、地場の人材が育成できる。

といった良い点がある。
経営の向上と利益の増大につながる。地域から見ても中小企業がSDGsに取り組んでもらうことの便益は大きい。中小企業がSDGsに取り組まない手はない。難しいのは、明確で簡単な経営理念を作ることである。

(4)スマートシティとSDGs
 四日市市にもスマートシティ構想があるということなので、このことに触れておく。日本で言われているスマートシティの概念は、スコープが狭いように思う。ジェンダーをどうするのかとか、障がい者をどうするのかなどが入っていない。まだ、技術者の作っている実験場のように思う。もし、取り組むなら、より広い社会課題を人と技術でつなぎ合わせるようなものであってほしい。それらは、最終的には次世代に繋がるものである必要がある。

(5)最後に
 SDGsの169の目標(ターゲット)が達成されれば、幸せになるか、例えば、常時コンビニで25種類のおにぎりを買えることが、(幸せになる)十分条件ではないことは、誰もが分かっているが議論されていない。
 こうした根源的な幸福のあり方についても、SDGsは2030アジェンダ前文の中で述べている。「誰一人取り残さない」前文パラ2は、有名であるが、前文の最初(パラ1)に書いてあることがある。それは、「in larger freedom」より大きな自由ということである。ここでいう自由(freedom)は、自分でできることが大きくなることである。世界中の人が、自分にできることが増えて、よりよく生きることができるようになることが一番の目指すところである。企業も、そのようなことをビジネスの中で考えていくことが本筋ではないかと思う。このような考えに賛同していただける経営者もだんだん増えてきていることは、心強い。未来は、明るいのではないか。
 今日は、90分にわたる長い講義を聞いていただいて有難うございました。